男の美学と村上春樹
今日は休みです!
懸念していた決算発表もとりあえずは乗り越え、カレンダー通りの休日を取ることが出来ました。といってもGWの予定はテニスだけなんですが・・・
村上春樹・・・それ程好き、ということではないのですが、新刊が出るととりあえず古本屋で買って読むという程度には好きです。「ノルウェイの森」が私の高校時代に大ヒットしましたが、個人的には「羊をめぐる冒険」が一番だと思っています。
一方で、私がこよなく愛する本としてF・スコット・フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」とレイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」があります。両者ともに男の美学というものを感じさせてくれると、個人的には感じております。当然のことながら、ハッピーエンドではありませんので、安心して読むことが出来る点も見逃せません(笑)
以前から村上春樹の文章はフィッツジェラルドとチャンドラーを足して2で割った様に感じていたのですが、ご本人もこの両者からは大きな影響を受けたらしく、最近自身の訳でこの2冊を刊行しました。
「グレート・ギャツビー」の方は野崎孝という方が、「長いお別れ」の方は清水俊二という方が訳したものがあります。同じ本を訳しているので、当然のことながら両者と村上氏訳を比較したがるのは人情というものでしょう。
「グレート・ギャツビー」
この本は、以前から村上氏が絶賛しておりまして・・・期待して呼んだのですが、うーん、正直オリジナル訳の方が自分は好きです。解説には「オリジナル訳の当時とは如何せん時代が変わっているので、現代風にアレンジしてみた」的なことが書いてあったのですが・・・その古めかしさが良い味を出していたんですけどね~。
致命的なのは、主人公が頻繁に使う「old sport」という言葉の訳し方。オリジナル訳だと「親友」なんですが、村上氏訳では「オールド・スポート」となっておりました。どうも「この言葉の持ついかがわしさまで考えると「親友」というより「オールド・スポート」の方が良い」ということらしいのですが・・・英文学に造詣が深い村上氏ならそうなのかもしれませんが、こちらは生粋の日本人。「オールド・スポート」とか言われても、何のイメージも湧かないんですよね。いかがわしい響き、という点も含めて「親友」の方が全然宜しいかと感じましたな。
「長いお別れ」
以前こちらで簡単に紹介しましたが・・・ハードボイルドの象徴的な作品と崇められております。私がこの本を初めて読んだときには衝撃を受けました、特に最終章の格好良さと言ったら・・・筆舌に尽くしがたいものがあります。学生時代には原書を入手し、読めもしないのに、格好つけて読む振りをしていたことを良く覚えています(笑)
どうやら衝撃を受けたのは村上氏も同様らしく、解説にはそんなことが書いてありました。一方、訳の方ですが、オリジナルでは割愛されていた部分も訳してあり、その意味ではより原書に忠実なのかもしれません。その点「グレート・ギャツビー」よりも良いと感じました。ただ、一番のヤマである最終章だけは頂けません。オリジナルの言葉の選び方の方が百倍格好良いですな。
それと、大いに不満なのが表紙。
こんなデザインになっちゃっております。
何か軽いです。
こちらが、オリジナル訳バージョン。
こっちの方が1億倍格好良いです。
なんだね、新しい方のカバーは。センスのかけらも感じやしない。
何か、作品の持つ品位を下げられた様で、下僕的は大いに不満ですな(笑)
ただ、村上氏自身の解説には、チャンドラーの文章の魅力・雰囲気についての分析や、実はチャンドラーがフィッツジェラルドが好きだった、とか色々興味深いことが書いてありました。それだけが救いでしょうか。
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